当記事は、IT企業の契約体制として問題視されているSES契約(客先常駐)で仕事をしている方や、SES契約ってやばいの?という疑問を持った方向けの内容です。
自社内でシステムの受託開発を行うのが一般的なIT企業の働き方と思われているかもしれませんが、中小企業の多くは社員を客先常駐させることを余儀なくされているのが現状です。
SES契約って、きつい言い方をすると『客の言いなり』です。
契約時間内の仕事割り当ては常駐先に委ねられているため、大手企業のやりたい放題なんです。
まさに弱小IT企業の食い物にしている負の契約形態と言えるでしょう。
悩み事
・今月も残業が45時間越えてる…自社に伝えてるはずなのに何で動いてくれないんだ。
・客先のリーダーが作業を大量に流し込んでくる…まるで奴隷のような生活でつらい。
・定例作業を繰り返すだけの生活…給料は14万だし、何のために仕事してるかわかんないよ。
私が働いていた企業でも、SES契約の協力会社の方が20名くらいいました。彼らは総じて仕事自体にやりがいを感じる事もなく、ただ依頼された業務を淡々とこなす日々を送っているように見えました。
さらに残業や休日出社を依頼されれば立場上断ることが出来ず、毎日残業続きで疲弊していましたね。
次の仕事が決まるまで自宅待機。給料が半分しかもらえないという悲惨な状況になっている人もいました。
結論から言うと、手遅れになる前に転職を視野に入れて動くことが賢明です。
特に30代後半になってくると、前職でSES経験しか無いと企業側がほとんど実績評価してくれません。技術スキルよりも管理スキルを求められるからです。
あなたがSES契約を長年続けていて理不尽な仕事や残業を我慢しているようなら、手遅れになる前に行動した方が良いです。
5分くらいで読める内容になっています。どうぞ、ご覧下さい。
SES契約(客先常駐)とは?派遣と何が違うの?
簡単にですが、SES契約の概要をお話しておきます。
SES契約とは?
SESはSystem Engineering Serviceの略称です。IT業界独自で用語で『客先常駐』とも呼ばれていますね。
一般的にIT企業は顧客から『請負契約』として案件を受注しますので、自社に持ち帰り開発を行うのが本来あるべき姿です。
ですが、客先の開発チームと合同でプロジェクトを進めるような案件だと、客先常駐できるメンバーを顧客が要求してくる場合があります。
上記のケースで、企業同士が結ぶ契約形態を『SES契約』と呼んでおり、企業は常駐先にエンジニアのスキル(労働力)を提供する代わりに顧客から対価をいただくような仕組みになっています。
すでにお気付きかと思いますが、自社開発と客先常駐では顧客がエンジニアに求める要求がまったく異なります。
請負契約(自社開発) | 作業の過程は重要視しない。 成果物が求めている要求を満たしていれば良い。 |
SES契約(客先常駐) | 作業の工程が全て。 言われた通りのスケジュールで何が何でも作業をやり通して欲しい。 |
やってることは変わらないのですが、一般的な派遣社員は派遣会社からの斡旋(あっせん)で契約期間だけ業務を遂行をします。契約段階で業務時間もきっちり決めますし、企業にも属しているわけではありませんので、言ってみればフリーランスですね。
対して客先常駐は『特定派遣』と呼ばれたりもしますが、自社から客先に送り込まれるので正社員ではあるのですが、仕事の指示系統は客先に委ねられることがほとんどです。
つまり自社側は取り決めた契約内で働かされているので仕事の融通が利かず、常駐期間が明確に決まっているわけでもないので、いつまで続くのかも不明瞭な状況で働くことになります。
SES契約の場合は働き方次第で自分の評価が変わってくるので自分の意見を言いずらいですし、
自社に揉み消されてしまうリスクもありますね。
SES契約があなたに及ぼすリスク
客先常駐は長く続ければ続けるほど、あなたの成長する機会を失う事になります。
具体的なリスクは以下の5つです。
- 契約範囲内なら割と何でもやらされる
- 休暇が取りづらい
- コーディング以外のスキルが身に付かない
- 現場が変わるとゼロからスタートになる
- 何のために働いているかよくわからなくなる
常駐先次第なので、必ずしも働きずらい環境ということはありませんが、基本的に技術者として成長することは難しいでしょう。
企業が求めるのは『労働力』であり、あなたのキャリアプランや将来を考えて仕事を割り当ててはくれません。
契約範囲内なら割と何でもやらされる
常駐先の企業はあなたを『労働力』を必要としているので、技術的に難しい事は依頼せずに時間が掛かる面倒な仕事をやらせようとしてきます。
あなたが未経験だろうとお構いなしなので、いきなり作業を割り当てられて着手させられる事が多いです。
わからない部分が上手く聞けずに悩んでしまう人が多いです。
また、残業や徹夜作業、休日出社も常駐先と自社間で合意されれば発生します。
パワーバランスを考えると断るのが難しいので、割と言われるがままになっているのが実情です。
有給休暇が取りづらい
自社内で働いている場合に有給休暇を取りたい場合は、部の上司や同僚と調整しておけば比較的容易に取れる企業がほとんどですが、客先常駐だと常駐先のメンバーとの調整も必要になってくるので少々面倒くさいです。
理解のある常駐先企業であるならば良いのですが、休暇を取る文化があまり無かったりすると「私用で休みを取るなんて認めない」「みんな仕事しているのによく休めるよね」とか、ひどい台詞を浴びせられて申請自体させてもらえない可能性もあります。
自社に訴えかけたとしても、『業務上の理由で却下した』と言われてしまうと、それ以上は追及できません。
コーディング以外のスキルが身に付かない
常駐先の環境で行う仕事ってコーディングや検証がほとんどです。
システムエンジニアが成長するために重要な『マネジメント能力』を伸ばす機会は無いに等しいと思って下さい。
コーディングスキルをひたすら鍛えたところで、新しい常駐先では役に立たないってことがよくあります。開発言語や環境って千差万別ですからね。システムエンジニアとして長く現場で働くためには管理能力は必須なのです。
SES契約ばかり繰り返している人は、管理能力が身に付いていないにも関わらず契約単価は年々高くなってしまうため、30代後半になると常駐先企業を見つけることすら困難になってきます。
30代後半で未経験となると、単価が安くて使いやすい若手社員の方が重宝されてしまうわけです。
「このままではまずい!」と気付いて転職しようと思っても、アピールできるスキルが無くて八方塞がりなんて自体にもなりかねませんよ。
現場が変わるとゼロからスタートになる
開発スキルも覚え直す必要があるのはもちろんなのですが、一番きついのは『人間関係の再構築』です。
例えば、毎年違う職場を転々とするような生活って、人付き合いが苦手な人にとっては苦痛でしかありません。
個人的な意見ですが、SES常駐を繰り返している人って雑談や世間話などのコミュニケーションを極力取ろうとしない印象です。よほど人懐っこい人でない限り知らない環境に放り込まれたら緊張して話せないのは当たり前ですし、関係を築いたところで来年まで続いているかわかりませんからね。
何のために働いているかよくわからなくなる
入社してからずっと客先常駐を繰り返している人の意見を聞くと、自社の経営状況やサービスを詳しく知らないって人が結構います。
そもそも毎月の帰社日すら設定していないような企業もあるくらいですからね。
自社への興味や帰属意識が薄れている状況で働き続ける事は、あなたにとってリスクでしかありません。
客観的に将来の事を考えてみて下さい。
・自社の経営状況を詳しく理解していない人を企業側は昇進させたいと思いますか。
・10年後も同じ仕事を続けられる自信がありますか。
・帰属意識の無い会社でずっと働き続ける意味は何ですか。
少しでも将来に不安を感じたのなら、自社内で働くための交渉や転職についても検討してみて下さい。
SES契約のメリットは?
ここまで、SES契約のリスクばかり話してきましたが、メリットがまったく無いというわけではありません。
3つほどメリットをあげさせていただきます。
- 未経験者でも雇ってもらえる
- 現場経験と人脈形成ができる
- 成果に対する責任感があまり無い
新卒未経験でIT業界に挑戦したい人や、バリバリ働いて常駐先企業からの引き抜きを狙いたい野心あふれる人ならば、2~3年程度続けてみるのはありです。
逆に2~3年働いているのにやっている仕事が変わり映えしないと感じ始めたなら、配置変更の依頼や転職活動を意識した方が良いと言えるでしょう。
未経験者でも雇ってもらえる
IT企業の求人票に『未経験歓迎』『学歴不問』といったフレーズを使っている会社の業務内容を見ると、ほぼ客先常駐スタイルとなっています。
要するに「常駐先によって求められるスキルが変わるので、現場で学びながら身に付けて下さい」というスタンスですね。
ITの勉強をしていないけど興味がある人や、内定がもらえなくて困っている人には助け舟と呼べるでしょうが、長く働き続けても自己の成長に繋がらない点には注意して下さい。
現場経験と人脈形成ができる
客先常駐の場合、NTT系列や通信キャリアなどの大手企業に配属される可能性が高く、最先端のスキルを身に付けるチャンスもあります。
仕事は大変かもしれませんが、スキル習得や大手企業との人脈形成に注力する働き方はありでしょう。
あなたの頑張り方次第では、常駐先企業側から引き抜きの話があがり、キャリアアップを狙うことも可能です。
成果に対する責任感があまり無い
基本的に常駐先の指示通り仕事をするだけなので、仕事自体への責任感はほとんどありません。
参画したプロジェクトが例え失敗したとしても、責められるのは客先のマネージャーやリーダー職の方々でしょう。
また、常駐先がブラックカラーの企業だとしても我慢すればいつかは帰社することができるので、嫌な仕事をひたすら続けるようなケースは少ないと言えるでしょう。
SES契約をやめたい人は【自社内で働く交渉】か【転職する】しかない
SES契約主体の働き方にリスクを感じているなら、脱却するために行動をすべきでしょう。
とはいえ、会社を辞めずに客先常駐から脱却する方法って『自社に戻って仕事をさせてもらう以外無い』のが現状です。
残念ながら、あなたが客先常駐主体の企業に就職してしまった時点で、自社で働く可能性は閉ざされてしまっているので、交渉するだけ無駄と言えるでしょう。
客先常駐以外に選択肢が無い状況に陥っている人は、自社内開発が主体の企業や社内SEを募集している企業に転職するのが最善です。
とはいえ、客先常駐しか経験がないと本当に転職できるのか不安にもなりますし、仕事が忙しいと求人を探す事すら困難だったりします。
自発的に活動する時間が無かったり、不安という方には『転職エージェント』という転職支援サービスを活用することをおすすめします。
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まとめ:SES契約の恩恵は少ない!避けて通る道を選びましょう
SES契約(客先常駐)で働き続けるリスクは伝わりましたでしょうか。
IT業界の中小企業は大手企業から仕事をもらって成り立っているケースが多いため、今後もSES契約は無くなることはないでしょう。
最後に私の意見を言わせてもらうと、SES契約自体は法令違反ということではないので、働き方の選択肢として間違っていないと思います。ただし、SES契約が主体の働き方ではマネジメント能力や特定のスキルが定着しないので『将来仕事が選べなくなる可能性』が高い働き方と言えるでしょう。
自分のキャリアプランを考え直す意味でも、自社で開発が行う環境でステップアップすることをおすすめします。